札幌地方裁判所 昭和47年(ワ)3069号 判決
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〔判決理由〕二、請求の原因第二項の1(被告石男の責任原因)について判断する。
1、<証拠>によれば被告石男は当時未成年者であつた運転者の被告篤(昭和二七年四月二日生)の実父であつて、加害車の所有名義人でもあることが認められる。
右事実に照らせば被告石男は加害車の運行供用者の地位にあつたものと推認すべきである。
2、ところで被告石男は被告篤と別居していたことなどを理由に、運行支配、利益を有しなかつたと主張するので更に考えてみる。<証拠>および本件弁論の全趣旨を総合すると次のような事実が認められる。
(一) 被告石男は農業を営んでいるが年間のかなりの期間土工などの出稼ぎをしており、また被告篤は中学卒業以来、土工、運転手などをして主として家を離れて仕事をし、その給料は殆んど家に送金していた。そして後記加害車購入の一〇日程前から被告篤は肩書住所からかなり離れてはいるが同町内の勤務先に住込みで働いていた。
(二) 加害車の被告石男の姉夫婦の家族が新車を買入れるに際して下取りに出した中古車で、話を聞いた被告篤の希望で下取した函館トヨペット株式会社と同人との間で交渉がなされた。しかしながら被告篤は未成年で割賦払のための口座等が開けず、また右会社の販売担当者から事故の際被告篤に賠償能力のないことを指摘され、被告篤は被告石男に依頼して売買契約の当事者となつてもらい、昭和四六年四月二〇日三六〇、〇〇〇円で売買契約が成立した。
(三) 被告石男は加害車の購入が家計に響くとの理由で当初消極的であつたが結局同意し、五〇、〇〇〇円をその父の口座から引出すことを許したりして頭金一〇〇、〇〇〇円の支払につき援助を与えた。(被告石男が一〇〇、〇〇〇円の援助を与えたとその主張中で自認していることに照らし、右認定に反する被告篤の供述は信用しない。)
(四) 加害車の購入後、被告篤は前記当時の勤務先に主として加害車を保管したが被告石男方にも保管したことがあり、その後被告篤が肩書住所のすぐ近所の勤務先(現場は岩内)や恵庭に各転職したことにともない、加害車は二月半ほど被告石男方に保管され、更に同年八月一五日頃被告篤の恵庭の勤務先に同人により運ばれた。
(五) 加害車は、被告石男に免許がないことから、専ら被告篤により使用され、走行費用も第一次的に同人が負担する形で被告篤は右費用を除いて家に送金をしていた。しかしながら被告石男が同乗する機会もないのではなかつた。
(六) 本件事故は被告篤の恵庭の勤務先の代表者の依頼でその妻の実家へ行く途中に発生したものである。
3 以上認定の事実によれば、なるほど加害車の購入時および事故当時に被告らが別居していたことは認められるが、被告篤が農家の一員として稼働先からの収入の殆んどを家に送金していることや、被告篤の転職の状況からすると、被告篤の生活の根は被告石男の肩書住所にあるというべきであり(このことは被告石男が加害車の購入は家計を圧迫するとの理由で当初これに消極的であつたことに端的に表われており、被告篤の送金のうちから割賦金が払われるような形になつたり、同人が走行費用を除いて送金をしていたとしても、右の関係は変わないとみられる。)、加害車が購入時から事故時までの期間の半分は被告石男方に保管されていることならびに弁論の全趣旨から車検証上の使用の本拠地も同人の肩書住所地にあると窺えることを併せ考えれば、被告らの別居の事実から被告石男の運行支配の可能性を否定するわけにはいかない。
また被告石男が免許を持たぬことから専ら被告篤が加害車を使用し、事故の発生場所が恵庭市であつたことを加えて考慮しても、加害車は被告石男が売買契約の当事者となり、頭金につき援助することにより初めて被告篤の利用が可能となつたものであつて、被告らの身分関係および前記具体的生活状況を考慮すると被告石男が加害車の運行支配可能性を持たなかつたという評価をすることもできない。
なお運行による利益につき付言するに加害車をフアミリーカー的に使用した旨の証拠はないが、被告石男が加害車の購入により被告篤からの家計に対する継続的かつ具体的な協力を期待したであろうことは前認定の各事実から容易に推認しうるところであるから、運行による利益は被告石男にもあつたとみるのが相当である。 (前川鉄郎)